【評】ゴジラ-1.0

「よく出来た」映画だけに、色々と考えさせられた。「シン・ゴジラ」があれだけ興行的に大成功を収めていた状態で「次の」ゴジラを制作することは相当なプレッシャーであったことは想像に難くないが、結果として、特撮映画、怪獣映画ではなく、日本映画として良い形に仕上がったのではないかと思う。

ゴジラは、戦争の象徴、大震災の象徴として描かれてくることが多い作品だが、今回もまた、それは「戦争の」象徴であると思う。

主人公である敷島は、特攻の生き残りで、自らの機体の故障を偽り、特攻から「逃げた」ことで苦悩する日々を送ることになる。

誰かが貧乏くじを引かなきゃなんねえんだよ!

ゴジラ-1.0

ともすれば、「貧乏くじを引くこと」を美化してきた、この国の体質に、この映画は、徹底的に否定的なイメージを植え付けようとしていると感じた。特攻から「嘘をついて」生き残った敷島に、ゴジラに対して20ミリを「撃てなかった」敷島に、最期は震電から脱出して生き残る、という選択肢が用意される。

なんとなく雰囲気で、周りの「空気を読んで」、生きて行かなくてはいけないこの国の住人に、新しい選択肢を突きつけている印象が強く残った。大切なのは何か。もっとも重要視しないといけないのは何であるのか、と。

同時に気が付いたのは、安藤サクラと、浜辺美波、そして神木隆之介が演じた「風景」としての昭和が最早、「時代劇」の部類に入っているということだ。昭和が終わり、平成が終わり、令和の世に、時代劇として、この新作は強いメッセージを残したのではないか。

ゴジラ生誕70周年、おめでとうございます。

【評】シン・仮面ライダー

原作に思い入れがそんなに無い状態で観たせいなのか、庵野秀明の失敗なのかはわからないが、少々違うような印象。

シン・ゴジラにおける原典へのリスペクトと、受け継がれた「恐怖感」「畏怖感」のようなもの。シン・ウルトラマンにおける原典へのリスペクトと、オマージュ感。その辺りがさっぱり感じとることが出来なかった。

そもそも等身大のヒーロー物という時点で、描き方というのは前2作とは変わってくると思うのだけど、場面が山の中やコンビナートというのはさておいても、あんなに空中高く飛翔したり、ピョンピョン飛び回るものだろうか。

庵野秀明の思い入れがどの辺りに「生きて」いるのかがちょっとわからなかった作品。

【評】シン・ウルトラマン

(ネタバレあり)

早速観てきた。シン・ゴジラでの「衝撃」を知っている我々にとっては、ある意味では「期待通り」の仕上がりだったのではないか。そして、オリジナルへのリスペクトもきちんと表現された良作だったのではないか、とは思う。

神永が冒頭で少年を助けに行くシーンと、ウルトラマンの「降着」がシーンとして被ったとき、多くのオールドファンは、ここが「合体」のシーンだと感じたはずだ。神永の死亡シーンも一瞬だがきちんと描かれている。そして、その後の現場作戦指揮所での一部始終はシン・ゴジラの作戦本部を彷彿とさせる。

過去の「空想特撮」に過ぎなかった作品を現代版に焼き直すということは、つまりこういうことだ、と提示したシン・ゴジラにおける政治偶像劇も、きちんと織り込まれている。どちらかというと、政治偶像劇が中心にあったシン・ゴジラと比べればそれは「控えめ」ではあるのだが、「外星人」が襲来した場合のシュミレーションとしては面白い。「政府の男」としか描かれていないけど、竹野内豊の存在感はさすがだな、と思った。

敢えて、難癖をつけるとすれば、山本耕史のメフィラスが、どうも大河ドラマや真田丸とキャラクターが重なってしまって、仕方がなかった。もう少しキャラクターをブレさせた演じ分けは欲しいところ。加えて、ラストパートのゼットンは、あそこまで巨大化させて「難敵」として描くよりも、もう少しウルトラマンと等身大にして、戦闘に現実味を持たせても良かったとは思う。

あとは、作品を貫く「思想」とか「メッセージ」のようなものが、最後のパートに「凝縮」されすぎていて、1回で読み解けなかった。なぜ、「禍威獣」はこの国にしか出現しないのか。どうして、「禍威獣」は出現するのか。そして、ウルトラマンはなぜ降着したのか。其の辺を再度読み解く試みはしたいと思う。

麒麟がくる#16「大きな国」

https://twitter.com/nhk_kirin/status/1256780692165259264

本木雅弘の斎藤道三は、凄い良かったと思うのだけど、なんだろう、明智光秀を主人公に据えたドラマが、今の所「国盗り物語」になってしまっているのはどうしたものか。そこに違和感がある。

もともと、長谷川博己という役者は、一歩「引いた」感じの演技が良くて、シン・ゴジラでも、八重の桜でも、その辺で良さが出ていたと思うのだが、今回は主役なのだから、もう少し中央に据えて、描いてみても良かったんじゃないの、と思ってしまう。

https://twitter.com/nhk_kirin/status/1257143064230940673

シン・ゴジラと市川実日子

市川実日子さんのファンである。八重の桜を観てから。
今回はシン・ゴジラを観てきたわけなんだが、市川実日子さんにキュンキュンした。冗談抜きで。
現実と虚構とか、特撮の技術とか、相変わらずこのクニはセクト主義の縦割り行政で、同調圧力ばっかりで糞なのだ、とか。
そんなことはどうでもいいが、川崎尚之助が纏める対策本部で淡々と「現実(リアル)」を語る市川実日子さんが好きである。

もう1回見にいこっと。