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人間という生き物

誠実に生きてても、割り切るしかないことはある件

顧客からクレームなど取引先とのトラブル発生には対処できても、社内で起こった不祥事が原因で、 企業がガタガタになってしまうことはままある。企業とは組織であり、組織とは人間のカタマリである以上、大の大人がひとつところで働いて問題が起きないはずがない。

 社員が会社の備品やほかの社員のモノを盗んだ、技術職が上司に内緒でライバル企業の休日アルバイトをしていた、幹部が女性社員を妊娠させてしまったなど、起こり得る不祥事は枚挙に暇がない。

「その人の長所を見て信頼して使っていくのが大事」などと本には書いていても、長所を生かしてうまくいっているときに限って、その人の欠点が大きな問題を起こしたりするもんである。当人の気が緩んでいるのか、そのぐらいは会社も認めてくれると侮っているのかは分からないが、雇ってきた社員が裏切っていたことが発覚したとき、心穏やかでいられる経営者などいないだろう。

 経営がうまくいかない社長が精神的に荒んで八つ当たりされた経験は多いが、突発的な不祥事が起こり、それも社内の人間の犯行だった場合に、トップの心理に与える悪い影響は計り知れない。

 もっともサラリーマン社長の場合、平社員のころから派閥争いなどトラブルを吸収しながら昇進してくるため、この手の突発的問題をいい意味で無責任に処置してうまくいくケースも多いようだ。人間の嫌な部分を見ながらも結果を出してのし上がる雇われ経営者はこういう場合強い。

 だが問題は創業社長である。社員と肩を並べて組織を率いてきたという自負が大きい経営者であるほど、人間不信にいったん陥った後の影響から、なかなか抜け出すことができない。そしてトップに立つ者の疑心暗鬼は、組織にとっていいことが一つもないのである。

 先週まで銀座で豪遊していた社長が翌週会ってみるとしょんぼりしているので、何があったか聞いてみたら、信用してた番頭格の幹部に裏切られたのだという。中学・高校と一緒に机を並べ、独立してからは右腕として働いてきた幹部が、いつの間にか取引先と結託してリベートを受け取っていたことが発覚し、大げんかの末、出て行かれたのだという。

 いや、仕事を任せっきりで給料も安めにしたまま一方的に信じてきたあんたもいい加減悪いだろ。しかし、当人は裏切られたと怒るよりは悲しみに暮れている雰囲気で、二回りほど身体が小さくなったように見える。

 人間の義理や忠義なんてのは、これはもう本当に水物で、経営者の不用意な一言や待遇の不満、家庭の事情やギャンブル好きといった当人の資質の問題でいくらでもひっくり返る。 ちょっと前まで尻尾を振っていたかと思えば、何かの拍子に手のひらを返すことなど容易に起こる。大企業になると、さすがに幹部社員の裏切り一発で潰れることはないが、社長を筆頭に社員全員が動かなければ仕事にならない中小企業では、経理マンが通帳持ってトンズラした瞬間にアウトである。

 こればかりは、気を付けすぎるほど気を付けて、社長本人が誠実に生きてきたつもりであっても、交通事故のように起こるときは起こる。人の心の中など誰にも分からない。企業は人間のカタマリで構成されている以上、逃れられない宿命と割り切るほかはない。
 もうこの辺りは、人の上に立つ者が必ず経験する関門かもしれない。

上に立つもの、に限らず。人づきあいすべてに言えることじゃないのかな。ちょっとした一言で人は心をえぐられる。そういう些細でどうでもいいような事に気がつかない日本人が本当に増えた。パワハラとか、モラハラとか、そんな事の前に。人間として何か大切なものを日本人は失ったんじゃないだろうか。

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