VIVANT

Netflixで、VIVANTの一気鑑賞終了。素晴らしかったと思う。半沢直樹は観ていないけど、同じ作り手ならば、評価が高いのも納得かもしれない。

別班と呼ばれる陸上自衛隊の諜報部隊の活躍を描く物語だが、伏線の張り方がしっかりしていて、24に始まる、アメリカドラマの影響が見て取れる。多分、回収されていない伏線もあるかとは思うが、最期に、多少、「説教臭く」なったのが残念なところだろうか。

美しいものとか、かつて、日本にあったけれど無くなってしまったものの面影を探し求めて、大衆はエンターテイメントに嵌るものだけれど、このドラマは、その要素をしっかりと拾っているような印象を受けた。

【評】ゴジラ-1.0

「よく出来た」映画だけに、色々と考えさせられた。「シン・ゴジラ」があれだけ興行的に大成功を収めていた状態で「次の」ゴジラを制作することは相当なプレッシャーであったことは想像に難くないが、結果として、特撮映画、怪獣映画ではなく、日本映画として良い形に仕上がったのではないかと思う。

ゴジラは、戦争の象徴、大震災の象徴として描かれてくることが多い作品だが、今回もまた、それは「戦争の」象徴であると思う。

主人公である敷島は、特攻の生き残りで、自らの機体の故障を偽り、特攻から「逃げた」ことで苦悩する日々を送ることになる。

誰かが貧乏くじを引かなきゃなんねえんだよ!

ゴジラ-1.0

ともすれば、「貧乏くじを引くこと」を美化してきた、この国の体質に、この映画は、徹底的に否定的なイメージを植え付けようとしていると感じた。特攻から「嘘をついて」生き残った敷島に、ゴジラに対して20ミリを「撃てなかった」敷島に、最期は震電から脱出して生き残る、という選択肢が用意される。

なんとなく雰囲気で、周りの「空気を読んで」、生きて行かなくてはいけないこの国の住人に、新しい選択肢を突きつけている印象が強く残った。大切なのは何か。もっとも重要視しないといけないのは何であるのか、と。

同時に気が付いたのは、安藤サクラと、浜辺美波、そして神木隆之介が演じた「風景」としての昭和が最早、「時代劇」の部類に入っているということだ。昭和が終わり、平成が終わり、令和の世に、時代劇として、この新作は強いメッセージを残したのではないか。

ゴジラ生誕70周年、おめでとうございます。

【評】仕掛人・藤枝梅安2

レイトショーがやっていないもので、なかなか観にいけなかったんだけど、ようやく観てきた。おそらくは、公開最終日。

天海祐希が際立っていた第一作とは違って、男同士の非常に男臭い物語。youtube公開のメイキングでも同じようなことを語っていたけれど。

それにしても、悪役のほうの椎名桔平一味のラストシーンは、原作通りなんだろうか。なんか非常にあっけなさすぎた。まあ、でも、佐藤浩市とその相棒を倒すところがクライマックスだとすれば、あれはあれで良いのかもしれない。

最後、エンドロールの後で長谷川平蔵を出して、次作の宣伝をするのはご愛嬌というところか。

【評】シン・仮面ライダー

原作に思い入れがそんなに無い状態で観たせいなのか、庵野秀明の失敗なのかはわからないが、少々違うような印象。

シン・ゴジラにおける原典へのリスペクトと、受け継がれた「恐怖感」「畏怖感」のようなもの。シン・ウルトラマンにおける原典へのリスペクトと、オマージュ感。その辺りがさっぱり感じとることが出来なかった。

そもそも等身大のヒーロー物という時点で、描き方というのは前2作とは変わってくると思うのだけど、場面が山の中やコンビナートというのはさておいても、あんなに空中高く飛翔したり、ピョンピョン飛び回るものだろうか。

庵野秀明の思い入れがどの辺りに「生きて」いるのかがちょっとわからなかった作品。

【評】仕掛人・藤枝梅安

藤枝梅安観てきた。「ザ・時代劇」という感じで良かったと思う。

原作素材がきちんとあって、今まで何度も映像化されていると、「アップデート」も大変だな、と思うのだけど、それなりにきちんと仕上がっていたのではないか。

大河ドラマにしても、忠臣蔵にしても、令和になると「前提知識」がないのを前提として「寄せて」描きに行くものだと思うのだけど、無理に寄せすぎることもなく、丁度良い塩梅。

人間の醜さとか、良さ、とか、美しさとか、色々なものがしっかりと描かれていた。

人間は、よいことをしながら悪いことをし、悪いことをしながらよいことをしている

講談社文庫「仕掛人・藤枝梅安」(一巻)「殺しの四人」あとがき

4月からは後編。木村拓哉の映画もいいけど、こちらの映画もレイトショーでやってくれないかな。

【評】レジェンド&バタフライ

東映創立70周年記念作品、ということで、それなりのものを期待して公開2日目に足を運んだが、「悪くはない」という印象。

そもそも論なんだけど、濃姫の輿入れから、本能寺の変までを描くにしては、3時間は短すぎる。信長の生涯を知って、どんな戦いがあって、どんな事が起こったのかを知識として持っていないと楽しめない印象があった。そういう意味でいうと、近年で「麒麟がくる」という格好のテキストは存在していたのだけど、皆が皆、観ているわけではないだろうし、場面転換の説明や解説も薄っぺらい感じだったので、ついていくのに苦労があった。むしろ、信長と濃姫の「会話劇」として楽しむのが正解なんだろうと思う。

そういう意味で言うと、綾瀬はるかは、木村拓哉を完全に「喰って」いて、綾瀬はるかの映画、という印象だった。

変に尾張訛りを差し込まなくてもいいかな、とは思うけど、それはそれとして。

ラストのシーンは、ハッピーエンディングで「切って」良かったと思うが、それも賛否両論かな。本能寺の変の殺陣が、適当すぎた感じがあるので、なんだかなあ、という気も少しある。映画がNHKの大河ドラマよりも駄目なのは如何なものかと。

それにしても、木村拓哉は多分、時代劇向いてないと思う。綾瀬はるかという大河主演女優を相手にするのだから、もう少し適当な人材いなかったかな。

【評】シン・ウルトラマン

(ネタバレあり)

早速観てきた。シン・ゴジラでの「衝撃」を知っている我々にとっては、ある意味では「期待通り」の仕上がりだったのではないか。そして、オリジナルへのリスペクトもきちんと表現された良作だったのではないか、とは思う。

神永が冒頭で少年を助けに行くシーンと、ウルトラマンの「降着」がシーンとして被ったとき、多くのオールドファンは、ここが「合体」のシーンだと感じたはずだ。神永の死亡シーンも一瞬だがきちんと描かれている。そして、その後の現場作戦指揮所での一部始終はシン・ゴジラの作戦本部を彷彿とさせる。

過去の「空想特撮」に過ぎなかった作品を現代版に焼き直すということは、つまりこういうことだ、と提示したシン・ゴジラにおける政治偶像劇も、きちんと織り込まれている。どちらかというと、政治偶像劇が中心にあったシン・ゴジラと比べればそれは「控えめ」ではあるのだが、「外星人」が襲来した場合のシュミレーションとしては面白い。「政府の男」としか描かれていないけど、竹野内豊の存在感はさすがだな、と思った。

敢えて、難癖をつけるとすれば、山本耕史のメフィラスが、どうも大河ドラマや真田丸とキャラクターが重なってしまって、仕方がなかった。もう少しキャラクターをブレさせた演じ分けは欲しいところ。加えて、ラストパートのゼットンは、あそこまで巨大化させて「難敵」として描くよりも、もう少しウルトラマンと等身大にして、戦闘に現実味を持たせても良かったとは思う。

あとは、作品を貫く「思想」とか「メッセージ」のようなものが、最後のパートに「凝縮」されすぎていて、1回で読み解けなかった。なぜ、「禍威獣」はこの国にしか出現しないのか。どうして、「禍威獣」は出現するのか。そして、ウルトラマンはなぜ降着したのか。其の辺を再度読み解く試みはしたいと思う。

【評】マトリックス レザレクションズ

個人的には、マトリックスはあの三部作で終わったもの、としていたのだが、続編ということで一応、DVDで鑑賞。

押井守の作品からインスピレーションを得たという噂もある、ド派手なアクションシーンはそこまで無くて、なんか、後日談という感じで淡々と物語が進んでいく。監督自身が親の死の悲しみを紛らわせるために撮った、なんていうエピソードもあるらしいが、まさにそんな感じ、そんな印象。世界観は壊していないけれど、別になくても良いかな、という感じ。

年齢を重ねたネオやトリニティーは見たくないし、モーフィアスを違うイメージでも観たくない。なんだか中途半端だった。

【評】ドライブ・マイ・カー

原作は既にkindleの本棚に入っているのだが、映像の方を先に観た。

自分自身が「孤独」であることを自覚しているせいか、三浦透子の演技にもの凄い惹かれるものがあった。結局、人間は孤独なのかもしれない。独りで生きていくしかないのかもしれない。共通する「思念」のようなものを持つ人が見つかれば、それだけで幸せなのかもしれない。そんなことを考えた。聞かせるわけでもなく自分の半生を彼女に聞かせる男と、その話を受けて自分の半生を語る女性。物語としては「長い」が、すっと観ることが出来た。

【評】閃光のハサウェイ

正統派の続編、というのがファーストインプレッション。池田秀一も語っていたが、ハサウェイ・ノアは、カミーユ・ビダンのストレートな鬱屈さとは何処か違ったものを抱え込んでいる。それは、ジェガンでチェーン・アギを撃墜した時、そしてクエス・パラヤが自分の身代わりとなってくれた時に産まれたものなのかもしれないが、その鬱屈さが昇華した結果がマフティーとしての活動になってはいないだろうか。

本編としては、言葉選びが秀逸で、おそらくこの辺はユニコーンあたりから、もっと言えば0083辺りの流れを受け継いだものだろう。今回はクスィーガンダムの受領までだったが、続編が楽しみになった。